熱中症予防に水分補給を呼びかけるテレビコマーシャルをよく見かけますが、その方法を間違えるといろいろな病気の原因となります。
中には命に関わるものもあるので注意が必要です。
水分補給において大切なのは身体が失った水分とミネラルの補給です。
しかしながらスポーツドリンクをはじめとした清涼飲料水やジュースなどには多量の砂糖が入っており、それにより虫歯だけでなく高血圧、高脂血症、心臓病や糖尿病などを引き起こします。
また砂糖の依存性の問題も深刻です。
実際に飲み物に含まれるお砂糖の量
こちらの画像は実際に使われているお砂糖の量をスティックシュガーに置き換えたものです。
反響の大きかった画像ですが実際に並べてみると圧巻ですね。
こちらのスティックシュガーは1本3グラムで、コーヒー1杯に1本入れれば充分ではないでしょうか。
ちなみにWHO世界保健機関の指針では1日の砂糖の摂取量を25グラムまでと定めています。
コンビニや自動販売機で主流の500MLペットボトルでスポーツドリンクだと30グラム(スティックシュガー10本分)、炭酸飲料だと60グラム(スティックシュガー20本分)ですので1日の基準を1本で超えてしまいますね。
いつも飲んでるドリンクにスティック何本分の砂糖が入っているか。 pic.twitter.com/oDua80flD6
— 片岡K (@kataoka_k) January 5, 2014
適切な水分補給とは
テレビコマーシャルでスポーツドリンクや経口補水液の摂取を推奨していますが、2つは全く違うものです。
そもそもスポーツドリンクは1960年代中頃、アメリカでアメリカンフットボール選手の発汗による脱水症状や熱中症を予防するために開発されたものです。
したがって激しいスポーツや労働の際のカロリーやミネラルの補給を兼ねています。
そのため先に示したように砂糖が多く含まれています。
対して経口補水液は軽度から中等度の脱水状態の方の水・電解質を補給・維持するのに適した病者用食品です。
感染性腸炎、感冒による下痢・嘔吐・発熱を伴う脱水状態、高齢者の経口摂取不足による脱水状態、過度の発汗による脱水状態等に適しています。
また成分の面でも砂糖の量は500MLペットボトルで12.5グラム(スティックシュガー4本分)とスポーツドリンクの半分以下です。
したがって脱水時の飲用を考えるのであれば経口補水液が適していると言えるでしょう。
ただ脱水の予防ということであれば水分補給は水や麦茶で充分です。
緑茶や紅茶、コーヒーなどはカフェインが入っており、利尿作用があるので避けるほうが良いでしょう。
ミネラルの補給には塩飴や昔ながらですが直接わずかな塩をなめたりすると良いでしょう。
虫歯
お茶や水など砂糖の入っていないものであれば良いですが、入っているものであれば当然虫歯の原因となります。
ペットボトルを持ち歩いてこまめに飲むことで、常に虫歯の菌にえさを与えることになりますので虫歯のリスクが格段に上がります。
スポーツ時になどを除いてはスポーツドリンクの飲用は避けた方が良いですし、飲んだあと口をゆすいだり、お水を1杯飲むだけでお口の中に砂糖が残りにくくなるためリスクが下がります。
ちなみに2015年にイギリスのプロサッカー選手のうち40パーセントに虫歯があるというショッキングなニュースがありました。
これはイギリスの同年代の平均値を上回る数値です。
中にはプレーに支障がでるような虫歯も見られたそうです。
日本でも子どものスポーツ教室などでスポーツドリンクを推奨する指導者の方がいらっしゃると聞きますが、スポーツは体が資本なので気をつけた方が良いでしょう。
また乳幼児へ麦茶や水のかわりにスポーツドリンクを飲ませるといったことも非常に危険です。
哺乳瓶う蝕やランパントカリエスと呼ばれる虫歯になり、ひどいものだと乳歯すべてが抜歯になることもあります。
虫歯だけじゃない!全身の病気
スポーツドリンク、清涼飲料水などを大量に飲み続けることによってペットボトル症候群と呼ばれる急性の糖尿病が引き起こされます。
正式名称はソフトドリンク(清涼飲料水)・ケトアシドーシス。清涼飲料水ケトーシスとも呼ぶこともあります。
またソフトドリンクやスポーツドリンクの急激な大量摂取だけでなく、糖分の多い食品の大量摂食でも発症することが報告されています。
発症のメカニズムは以下の通りです。
糖分を多く摂取すると血糖が高くなり、喉が渇きます。そこでスポーツドリンクなどを飲むとさらに喉が渇くという悪循環となり、最後にはインスリンと呼ばれる血糖を降下させるホルモンを分泌させるすい臓が疲弊してインスリンが出なくなるとペットボトル症候群と呼ばれる急性の糖尿病となります。
ペットボトルの手軽さから20代から30代の若者に多かったですが、最近は暑さの為、若年者や高齢者にも多くなってきています。
多尿、嘔吐、腹痛、意識混濁、昏睡(糖尿病性昏睡)などの症状がみられ、重篤な場合、死亡することもあります。
また砂糖の過剰摂取は中性脂肪の増加(高脂血症・脂質異常症)による動脈硬化を引き起こします。
動脈硬化は心筋梗塞や脳卒中の原因となるため注意が必要です。
さらには砂糖の摂取により急激に血糖が増えるとインスリンが大量に分泌され、血糖を急激に降下させます。
そのため一時的な低血糖となり、その際血糖を上昇させるためにアドレナリンが分泌されます。
アドレナリンは精神を興奮させる作用があるのでイライラしたり、キレやすくなったりします。
また砂糖には麻薬と同じような依存性もあると言われています。
減塩は一般的ですが「減糖」はまだまだ一般的ではありません
最近だと精製した上白糖よりも甜菜糖や黒糖、はちみつ、メープルシロップを積極的に使用する方も増えているといいます。※
これは精製した糖に比べ、ビタミンやミネラルが含まれることや、ショ糖以外の糖が入っていることが身体に良いという考えに基づくものです。
また世界に目を向けると肥満税やソーダ税、砂糖税と呼ばれる砂糖や、炭酸飲料を対象にした税金が導入されている国もあります。
日本でも近く減糖という言葉が一般的になると思います。
この暑い時期だからこそ、普段の生活を一度振り返ってみることをおすすめいたします。
※1歳未満の赤ちゃんがハチミツを食べることによって乳児ボツリヌス症にかかることがあります。ボツリヌス菌は熱に強いので、通常の加熱や調理では死にません。1歳未満の赤ちゃんにハチミツやハチミツ入りの飲料・お菓子などの食品は与えないようにしましょう